ピクシブ文芸
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書くことに困ったら

伊坂幸太郎


伊坂幸太郎 最終回
  『グラスホッパー』では自殺をうながす「自殺屋」や、人を押す「押し屋」という職業人を書きたいと思ったので、最初に彼らを書いたらもう満足してしまいました。編集者に「基本的に小説は目的か謎で引っ張っていくもの」だとアドバイスされて、「あ、どっちもない」って悩みました。そう考えると、設定ありきで書くのは僕の場合、うまくいかないんです。書きたい場面があって、しかもその場面が物語の後ろにあればあ …

伊坂幸太郎 第三回
  『重力ピエロ』は、まず母親がレイプされた結果、生まれてきた子供を「春」という名前にしようと決めました。「春が二階から落ちてきた」は、その「春」からのインスピレーションで出てきた一文ですね。『重力ピエロ』というタイトルが先行していて、そのあとに兄弟の設定ができて、それから「春が落ちてきた」って書き出しが浮かんだんです。でも、これではあまりにファンタジーのような気がして、「二階から」とい …

伊坂幸太郎 第二回
  『死神の精度』だと、〈死神という存在〉と〈CDショップの試聴機の前でヘッドフォンをしている姿〉の組み合わせがそうなんです。これを方法論といえるかどうかはわかりませんが、フィクションとしての好みなんですよね。 天使は図書館に集まるというのは有名な映画の設定ですが、死神にはCDショップの試聴コーナーに集まるという設定を作り、奇妙な現実感を生む効果をねらいました。「死神=空を飛ぶのが好き」 …

伊坂幸太郎 第一回
   僕は、最初にあまり綿密なプロットは立てられないんです。書きたい場面や書きたいモノがあるだけで、映画でいえば、予告編のようなイメージしか持っていません。書きたい場面や「絵」があって、それらをつないでいくパターンが多いですね。例えば『アヒルと鴨のコインロッカー』では、〈本屋を襲う〉〈ブータン人をめぐるトリックが明かされる〉〈ラスト近くで呼び鈴を押しても隣人が出てこない〉という三つの場面 …

第3回 芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか
 それから十二年後、『人間失格』を三回に分けて発表しながら入水自殺した彼がみずからの死を思う過程で、かつて芥川賞があれば「どんな苦しみとも戦つて、生きて行けます」と書簡にしたためたことを思い出したかどうかは、むろん定かではありません。ただ、同時期に書かれて死後発表されたエッセイ「如是我聞」の最終回で、かつての川端と同様に自分を蔑んだ志賀直哉に向け、「君について、うんざりしていることは、もう一つ …

第2回 芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか
 とはいえ、芥川賞が誕生した当初は、それとはまったく逆の状況がありました。 「芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか」を検討する前に、もう少し、賞そのものについて見てゆきましょう。芥川賞と直木賞を考案・創設した、作家であり「文藝春秋社」の創立者でもある菊池寛は、エッセイのなかでこんなふうに書いています。    芥川賞・直木賞の発表には、新聞社の各位も招待して、礼を厚うして公表したのであるが、 …

第1回 芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか
第1回 芥川賞の力 「もし芥川賞をとれたとして、それからどうなるんですか?」と天吾は気を取り直して尋ねた。 「芥川賞をとれば評判になる。世の中の大半の人間は、小説の値打ちなんてほとんどわからん。しかし世の中の流れから取り残されたくないと思っている。だから賞を取って話題になった本があれば、買って読む。著者が現役の女子高校生ともなればなおさらだ。(…)」(『1Q84』)   「小説の値打ち」がな …
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